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国内外の時計市場でますます存在感を高めていくグランドセイコーは、日本が誇る時計ブランドだ。

40代を迎え、公私ともに若い頃とはポジションやライフスタイルが変わった男性に、ぜひおすすめしたい。本記事では、そんな40代に向けて、グランドセイコーの洗練された名機5選を紹介する。

セイコーから分離。世界へ挑むグランドセイコー
ブランド誕生から60周年を経て、グランドセイコーの勢いは増し続けている。とりわけ2017年にセイコーから独立して以降は、グローバル化とラグジュアリー化を推し進めることで、国内外の時計市場でプレゼンスを高めていった。40代の大人の男性がグランドセイコーをより深く理解するために、独立の経緯や歴史的に強みとしてきたムーブメントについて紹介しよう。

スイスの高級時計と並び称される国産時計
初代グランドセイコー""

1960年に発売された初代グランドセイコースーパーコピー時計代引き専門店。その無駄のないデザインと高い品質を追求する姿勢は、現在まで引き継がれている。
1961年の腕時計の輸入自由化を控えた60年、初代グランドセイコーはスイス製高級腕時計に比肩する国産最高級腕時計を目指して誕生した。

スイス・クロノメーター検定優秀級相当の精度を備えた初代モデル以降、抜群の高精度と信頼性を誇るムーブメントと腕時計を立て続けに発表し、日本発のマニュファクチュールとして国際的な評価を高めていく。

2017年には、セイコーから独立。ダイアル12時位置にあった「SEIKO」ロゴも「Grand Seiko」に統一された。これはブランド認知をより高め、2010年に始まった海外進出をより加速させる意思表明でもある。

ムーブメントはクォーツ・機械式・スプリングドライブの3種
グランドセイコーは「9F クォーツ」「9S メカニカル(機械式)」「9R スプリングドライブ」という3種類の駆動方式を使い分ける。

9Fクォーツは、クォーツの弱点であったトルクの弱さを克服。ツインパルス制御モーターの搭載により、省エネルギーながら機械式のように太い針を動かせる仕様となった。精度は年差±10秒で、クォーツとしては珍しい精度調整用の緩急スイッチも備える。

9S メカニカルは、最大約80時間のパワーリザーブや毎時3万6000振動のハイビートなどが特徴だ。高精度の実現のために、ムーブメントの心臓部である脱進機のパーツには先端技術のMEMS製法を採用。0.001mm単位の精度で加工されている。

9R スプリングドライブは、主ゼンマイによる大きなトルクとIC・水晶振動子による高精度を両立した、グランドセイコーのみが製造する新機軸のムーブメントである。なお、携帯精度は平均月差±10~15秒ほどだ。

40代の男性にグランドセイコーをおすすめする理由
40代男性の腕時計選びで重要なのは、年齢や社会的地位に見合った選択、あるいは目的に合った実用性を見極めることだ。グランドセイコーの性質が40代にふさわしい理由を見ていこう。

機能性が高く実用的
腕時計の実用性は、精度・パワーリザーブ・視認性・着用感に大きく左右される。

9F クォーツや9R スプリングドライブは前述のとおり高精度で、9S メカニカルもスイス公式クロノメーター検定協会(C.O.S.C.)基準を上回る「新GS規格」をクリアする。また、モデルにもよるが、9S メカニカルのパワーリザーブは約50時間〜、9R スプリングドライブは約72時間〜(約8日間のモデルも!)だ。なお、9F クォーツでは約3年間、電池交換の必要がない。

搭載する複雑機構はクロノグラフやGMTなどがメインで、無駄のないデザインで視認性は良好だ。ブレスレットは取り回しがよく、総合的に日常的な実用性の高さが目指されている。

高級感のあるデザイン性
44GS

グランドセイコーのデザインコード「セイコースタイル」の礎を築いた、1967年発売の「44GS」。
グランドセイコー独自のデザインは、1967年に発売された「44GS」によって「セイコースタイル」として確立されている。

ゆがみやねじれのない平面を基調とし、インデックスや針の配置・サイズ・角度が光と影を適切にコントロールするため、洗練されたスタイルと良好な視認性が得られるのだ。

ケースは「ザラツ研磨」による下地処理の後に鏡面仕上げを施し、インデックスと針にも多面カットが採用される。

優れたコストパーフォーマンス
グランドセイコーは2017年以降、100万円から時には数百万円に及ぶ高級モデルを拡充させているが、30〜80万円台ほどの中価格帯のモデルも多い。

ムーブメントの機能性や品質は高く、ビジネスシーンに映える高級感のあるデザイン性も備えるため、むしろ今までが安すぎたという見方もできる。

価格帯のシフトや海外市場からの評価でステータス性が向上することも想定されるため、比較的手に入れやすいモデルは狙い目とも考えられるだろう。

40代の男性におすすめのモデル5選
趣味としての腕時計ならば好みのモデルをチョイスすればよいが、着用シーンなどの条件によってフォーカスを絞るなら、選ぶべきモデルは限定される。40代の男性に相性がよいモデル5選を紹介しよう。

シンプルでバランスのいい「ヘリテージコレクション」Ref.SBGR315
SBGR315
グランドセイコー「ヘリテージコレクション」Ref.SBGR315
自動巻き(Cal.9S65)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径40mm、厚さ13mm)。10気圧防水。63万8000円(税込み)。
「ヘリテージコレクション」Ref.SBGR315は、シンプルで飽きのこないデザインとムーブメントの高機能性を両立した、末長く使っていける自動巻きモデルである。

反射を抑えた上品なシルバーカラーは、ビジネスシーンとの相性がよい。ケース径40mmというほどよいサイズ感で、取り回しのよいブレスレットを備えているため、日常的な着用に活躍するだろう。

搭載するCal.9S65は9Sメカニカルを代表するスタンダードなムーブメントで、日差+5秒〜−3秒の精度を保持し、パワーリザーブは最大約72時間(約3日間)である。金曜の夜に外しても、月曜には問題なく動作するのも魅力だ。

“大人”のスポーツウォッチ「エボリューション9 コレクション」Ref.SLGA015
グランドセイコー SLGA015
グランドセイコー「エボリューション9 コレクション スプリングドライブ 5 Days Diver’s 200m」Ref.SLGA015
自動巻きスプリングドライブ(Cal.9RA5)。38石。パワーリザーブ約120時間。ブライトチタンケース(直径43.8mm、厚さ13.8mm)。200m防水。168万3000円(税込み)。
「エボリューション9 コレクション」は、44GSから続いてきたセイコースタイルを進化させ、審美性、視認性、装着性をさらに追求したデザイン文法が備わったコレクションだ。同社が外装に対してさらなる高みを目指す姿勢が、垣間見える。

本作は、そんなエボリューション9 コレクションの中でも、スポーティーなダイバーズウォッチとなっている。スポーティーとはいえ、ゆがみのない面や稜線が際立つケースとブレスレットは高級機らしい風格を放っており、“大人”のダイバーズウォッチと言えるだろう。黒潮などといった、日本の海流をイメージした文字盤も、本作の魅力のひとつである。

次世代スプリングドライブCal.9RA5を搭載していることも特筆すべき点だ。このムーブメントは2020年、グランドセイコー誕生60周年の節目の年に発表された新たなる旗艦ムーブメントで、従来品の約1.66倍にあたる約120時間のパワーリザーブを実現したことに加えて、衝撃や温度変化への耐性も高まっている。

白樺林をイメージした「エボリューション 9 コレクション」Ref.SLGH005
エボリューション 9 コレクション SLGH005
グランドセイコー「エボリューション 9 コレクション」Ref.SLGH005
自動巻き(Cal.9SA5)。47石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約80時間。SSケース(直径40mm、厚さ11.7mm)。10気圧防水。127万6000円(税込み)。
同じくエボリューション9 コレクションから、グランドセイコースタジオ 雫石の周辺に群生する白樺林を文字盤で表現したモデルを紹介しよう。この文字盤から、通称“白樺”と呼ばれている。

本作は2021年に発表されたモデルで、独特な型打模様をあしらった文字盤が大きな特徴である。さらに、輝く繊細なカラーリングが施されていることで、冬の白樺林を雪が覆うさまをほうふつさせる。

搭載するムーブメントは、次世代メカニカルCal.9SA5。3万6000振動/時のハイビートはそのままに、約80時間の実用的なパワーリザーブを実現しており、シースルーバックからはストライプ模様の「雫石川仕上げ」が施されたこのムーブメントを観賞できる。

“春分”がテーマとなった「エレガンスコレクション」Ref.SBGJ251

グランドセイコー「エレガンス コレクション」Ref.SBGJ251
自動巻き(Cal.9S86)。37石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約55時間。SSケース(直径39.5mm、厚さ14.1mm)。日常生活用防水。100万1000円(税込み)。
他社とは一線を隠す文字盤意匠は、グランドセイコー人気を押し上げた大きな要素である。文字盤装飾はさまざまに存在するが、規則的なパターンが多い。一方のグランドセイコーは、日本の自然や美意識をテーマに、不規則であったり有機的であったりするパターンによって、独自の表現を確立しているのだ。

深みのあるグリーン文字盤の本作も、そんなグランドセイコーの魅力を味わえる1本だ。二十四節気のうちのひとつ「春分」の頃、人里離れた山奥でひっそりと可憐に咲く山桜をイメージしてデザインされた。グリーンを背景に、GMT針やGMTのロゴがピンクゴールドで彩られているところに、さりげなく春の雰囲気が配されているというわけだ。

独創性はあるものの、派手ではなく、優美なラウンドフォルムはエレガントだ。ビジネスにも、カジュアルにも着けこなせるGMTウォッチである。

ジャケットの袖口から控えめな存在感を放つ「エレガンスコレクション」Ref.SBGR261

グランドセイコー「エレガンスコレクション」Ref.SBGR261
自動巻き(Cal.9S65)、35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径39.5mm、厚さ13.1mm)。日常生活用防水。63万8000円(税込み)。
直径39.5mmという大きすぎないケースにアイボリーカラーの文字盤を備えた、クラシカルな「エレガンスコレクション」Ref.SBGR261。エレガンスコレクション全体を通して派手すぎない、端正なスタイルを有することを特徴とするが、そんな中でもエレガントなデザインの1本が本作と言える。

ボックス型のサファイアクリスタルガラスの風防やブルースティールの秒針なども、クラシック。ドレスウォッチのお手本のようなモデルだけに、スーツの袖口を上品に演出するだろう。

年齢に合った腕時計を
40代の大人の手元には、20代や30代が憧れる高級腕時計を着用したい。本物を選ぶ審美眼が求められる年代ともいえるだろう。

機能性や品質に申し分ない、海外でもさらなる飛躍を目指すグランドセイコーは、まさに40代向けの高級腕時計だ。

ブレゲ「マリーン」の現行モデルを実機レビューする。

本作は、2018年に登場した第3世代のマリーンだ。いわゆるラグジュアリースポーツウォッチらしいパッケージを持つ本作。今回は、その真価を探っていきたい。

アブラアン-ルイ・ブレゲの偉業に敬意を表する、ブレゲ「マリーン」
今回インプレッションを行うのは、ブレゲ「マリーン」の現行モデルだ。マリーンは、1815年にアブラアン-ルイ・ブレゲがフランス王国海軍時計師に任命されたという偉業に敬意を表し、1990年に誕生したコレクションである。ルーツ自体はマリンクロノメーターであるものの、デザインや機能上の直接的な関連はない。現在のブランド公式の説明では、“伝統と技術的卓越性を兼ね備えたスポーツウォッチ”として位置付けられている。

初代モデルは、ヴァシュロン・コンスタンタンの「222」やセイコー クレドールの「エントラータ」などを手掛けたことで知られる、ヨルグ・イゼックによってデザインされた。一見してブレゲの代表作である「クラシック」のようなデザインだが、厚みを持たせたケースや大型のリュウズを包むリュウズガードなど、スポーティーな要素を溶け込ませることで、ブレゲらしいエレガントさを損なわずにアクティブに仕上げた。

2004年には第2世代へモデルチェンジし、ブレゲスーパーコピー時計代引き専門店よりダイナミックな造形を獲得した。蓄光塗料が塗布されたブレゲ針やヴァーグギヨシェを施したダイアル、太くがっしりとしたラグ、ラバーストラップの採用など、さらにスポーティーさを強調したデザインによって高い支持を得た。現在でも、マリーンといえば第2世代を思い浮かべる方も少なくないだろう。

そして2018年に発表されたのが、現行の第3世代である。詳しくは後述するとして、最も大きな変化は、ラグの形状が変更されたことだろう。ケースからベルトへとシームレスにつながるデザインは、いわゆる“ラグジュアリースポーツウォッチ”にも通ずるものである。

発表当初こそ、モデルチェンジに対する賛否両論を呼んだ第3世代のマリーン。それから数年が経ち、新たな定番として認識されつつある今だからこそ、フラットな目線で評価をしてみたい。なお今回のレビュー対象は、チタンケースを採用したグレーダイアルの3針モデルだ。ギヨシェダイアルを採用した18Kゴールドケースモデルであれば、また違った印象となるだろう。そのことをご留意の上、読み進めていただきたい。

ブレゲ「マリーン」Ref.5517TI/G2/5ZU
ブレゲ「マリーン」Ref.5517TI/G2/5ZU
2018年に登場した、第3世代の「マリーン」。サンレイ仕上げのグレーダイアルを採用した、チタンケースモデルをレビューする。なお、この個体は筆者の私物である。自動巻き(Cal.777A)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。Tiケース(直径40mm、厚さ11.5mm)。10気圧防水。292万6000円(税込み)。

それぞれの意匠が調和したサンレイダイアル
まずはダイアルから見ていこう。レイアウトは至ってシンプルだ。ローマ数字インデックスが同心円状に並び、センターに時分秒針、3時位置に日付表示を配し、奇をてらったような意匠はない。ブレゲを象徴するギヨシェ装飾も施されておらず、あっさりとした味付けだ。しかし、ディティールに目を移すと、そのシンプルなデザインに躍動感と実用性を高めるための工夫が凝らされていることに気付く。

ダイアル全面には、サンレイ仕上げが施されている。一般的なサンレイ仕上げは、ダイアルの中心を始点として筋目が放射状に広がるように施されることが多いが、本作では12時位置のロゴを始点としている。これによって光が差し込んだ際、特にダイアルの6時側半分において、外に向かって大きく広がるような光の束が現れる。光の当たり具合が変化することで、シンプルなダイアルに躍動感が生まれるのだ。

ブレゲ「マリーン」Ref.5517TI/G2/5ZU

12時位置のロゴを中心とするサンレイ仕上げ。光の当たり具合によって、ダイナミックに表情を変える様子を楽しむことができる。ダイアルの素材はゴールド。
各ローマ数字インデックスの上部に見られる“ヒゲ”にも注目したい。例えば“X”は本来、上下で線対称な文字だが、上部にのみヒゲを付けることで、ダイアルの外側に向かって広がるような印象をもたらしている。日付表示に関しても同様だ。窓を台形に仕上げ、数字の1桁目をやや大きくすることで、インデックスとの調和を図っている。

ローマ数字インデックスとしては珍しく蓄光塗料が施されていることも、本作の特徴である。蓄光塗料を充填するための“枠”として機能するようにフォントが調整されているのだ。ブレゲらしさとスポーツウォッチとしての実用性を両立させた、マリーンにこそふさわしい意匠である。

ブレゲ針のデザインを踏襲した時分針にも、同様に蓄光塗料が施されている。第2世代のマリーンでも蓄光塗料が塗布されていたが、第3世代ではドットの中に線を通したデザインに改められている。また、時分針が重なっている場合でも判読性を保つことができるのは、ブレゲ針の利点だ。例えばドーフィン針であれば、時分針が重なったとき、“重なっている”ということに気付きにくい。一方ブレゲ針であれば、ふたつのドットが一直線に並んで見えるため、“重なっている”ということが一目で分かるのだ。

ブレゲ「マリーン」Ref.5517TI/G2/5ZU

時分針が重なった場合でも、そのことを瞬時に認識することができるブレゲ針。秒針のカウンターウェイトの形状は、国際信号旗の“B” (Breguetの頭文字)をかたどったもの。

ベルト一体型のグレード5チタンケース
ケースはグレード5チタン製。一昔前まで主流であったグレード2チタン(純チタン)は、柔らかく粘りの強いという素材の性質上、ヘアラインやポリッシュなどの高級感ある仕上げを与えることが難しく、くすんだグレーの色味にサンドブラスト仕上げという見た目のものが多かった。対して、チタンにアルミニウムやバナジウムを加えた合金であるグレード5チタンは、耐食性や耐アレルギー性こそグレード2チタンに若干劣るものの、ステンレススティールに遜色ないほどの硬度と審美性を備えている。

本作には、グレード5チタンの特性を生かした立体的な造形が与えられている。まず目に入るのは、ケースサイドに施されたコインエッジ装飾だ。ひとつひとつの刻みにエッジが立ち、ケースの立体感と華やかさを向上させている。加えて3時位置には、波状のリュウズガードが配されている。恐らくこれは、コインエッジが施されたミドルケースとは別パーツで製作され、溶接またはケースの内側からネジで固定されているのだろう。リュウズガードとコインエッジの境目であっても、そのシャープさはいささかも失われていない。

ブレゲ「マリーン」Ref.5517TI/G2/5ZU

ブレゲを象徴するコインエッジ装飾。波状のリュウズガードが、リュウズを保護しつつ優雅さを醸し出している。
ベゼルはダブルステップタイプ。下段をヘアライン、上段をポリッシュに仕上げ分けている。多くのラグジュアリースポーツウォッチは、ベゼルに幅を持たせることでスポーティーな印象を強めている。その点では本作も共通しているが、ダブルステップベゼルという形状を採用し、さらに異なる仕上げを組み合わせることで、幅広のベゼルがもたらす野暮ったさを軽減しているように感じる。

第3世代のマリーンを特徴付けているのが、プレート型のラグだ。第2世代までは一般的な2本のラグを有していたが、本作ではセンターに凸型のプレートを配し、ベルトとの一体感を高めた。この変更は、ケース全体の縦の長さを切り詰めることにつながり、見た目のコンパクト化にも貢献している。それと同時に、平面のプレートが力強さを感じさせ、よりスポーティーさを強めている。

ブレゲ「マリーン」Ref.5517TI/G2/5ZU

第3世代を象徴するプレート型のラグ。ヘアライン仕上げの平面が力強さを感じさせる。ダブルステップベゼルは、下段をヘアライン、上段をポリッシュに仕上げ分けている。

スポーティーに装うラバーストラップ
ベルトのバリエーションは、チタンブレスレット、ラバーストラップ、レザーストラップが存在する。ベルトは、ラグの両サイドからネジによって固定されているが、ユーザー自身で交換することはできない。ネジ頭が特殊形状であるため、取り外しには専用の工具が必要となるのだ。クイックチェンジ機構があればより便利だが、本作のような古典的な固定方法は、信頼性の面で優れていると言えるだろう。

今回レビューするモデルには、ラバーストラップが装着されている。表には、船のデッキを想起させるような溝が刻まれているが、過度な装飾性はなく、オンオフ問わず使いやすいデザインだ。裏面には波状のパターンが施され、汗をかいたときのべたつきや蒸れを防ぐ。

標準でフォールディングバックルが装着されている点も魅力だ。両開きのタイプであり、片方は勘合式、もう片方はプッシュボタン式である。船の舵をかたどったデザインが、マリーンのルーツを思い起こさせる。この舵は、装着する際に親指の腹などで押し込むこととなる部分だが、僅かに湾曲した形状のため、指の腹にフィットして押しやすい。操作感の向上に向けた細やかな心配りが感じられる。

ブレゲ「マリーン」Ref.5517TI/G2/5ZU

適度なコシを持つラバーストラップ。フォールディングバックルには、船の舵をモチーフとしたデザインが与えられている。

高級機らしい感触を持つCal.777A
本作が搭載するのは、自動巻きムーブメントのCal.777Aである。ブレゲの中でもベーシックなCal.777系は、コンプリケーションのベースにもなる基礎体力に優れたムーブメントだ。シリコン製ヒゲゼンマイや、約55時間のパワーリザーブなど、現代の自社製ムーブメントとして標準的なスペックを持ち合わせている。

実際に触ってみると、高級機らしい優れた操作感を味わうことができる。時刻調整では、正逆どちらに回しても柔らかくふわりとした感触が指に伝わり、ふらつくことなく狙った場所に針を置くことができる。リュウズを戻す際に針飛びをすることもない。

仕上げも凝ったものだ。受けには幅の広いストライプ装飾が施され、ローターはバックルと同様に船の舵をモチーフとしたデザインを与えられている。シースルーバック仕様のため、隅々まで鑑賞することが可能だ。

ただひとつだけ、気になったところがある。ローター音の大きさだ。片方向巻き上げのため、着用時に腕の振りによってローターが勢いよく空転することがあるのだが、その際のカラカラという音が存外大きく聞こえる。性能には全く関係ないが、少しチープに感じてしまうことが玉に瑕である。

ブレゲ「マリーン」Ref.5517TI/G2/5ZU
ムーブメントは、Cal.777Aを搭載。ローターには、バックルと同様に船の舵をあしらったデザインに仕上がっている。ケースバックはネジによって固定され、深くはっきりとした刻印が施されている。

長時間の着用でも苦にならない、軽快な装着感
本作のキャラクターは、腕に載せてこそ実感できる。チタンケースとラバーストラップの組み合わせは、時折着けていることを忘れてしまうほどに軽快な装着感をもたらしてくれる。実を言えば、筆者はこれまでチタンケースの時計をあまり好んでいなかった。持ったときの重量と見た目のギャップから生じる違和感を拭えず、言葉を選ばなければ安っぽく感じてしまうからだ。これは、軽量な新素材が続々と登場する時計界にあっては捨て去るべき価値観かもしれないが、頭での理解と体に刷り込まれた感覚は、なかなかに一致しない。あくまでも主観的な感想に過ぎないが、厚みを抑えたケースを持つ本作は、重さに関する見た目と実態とのギャップが少なく、筆者にとって違和感が働かないものであった。

短く切り詰めたラグは、腕乗りも良い。筆者の腕回りは約16.5cmだが、サイドから見ても時計と手首の間に大きな隙間はなく、手首からもはみ出すことなく腕上に収まっている。

視認性も十分。ダイアルのグレーと蓄光塗料のホワイトによるコントラストが、インデックスの存在を際立たせてくれる。もし蓄光塗料が塗布されていなければ、インデックスはダイアルに埋没してしまっていただろう。サンレイ仕上げの中には、ビカビカと強い光を放つものもあるが、本作では落ち着いた印象であり、直射日光下でも目に優しい。インデックスや目盛りにしっかりと届く長さの針は、優れた判読性をもたらしてくれる。

ブレゲ「マリーン」Ref.5517TI/G2/5ZU
軽量なチタンケースと肌触りの良いラバーストラップが、優れた装着感をもたらす。ケースサイドの立体的な造形も魅力のひとつ。

バランスに優れた上質なデイリーウォッチ
本作に宿るのは、ブレゲらしい洗練された上品さと、デイリーユースに耐えうる高い実用性だ。ローマ数字インデックスやブレゲ針、ケースのコインエッジ装飾など、ブレゲを象徴するデザインコードを盛り込みつつ、蓄光塗料を多用したダイアルに、10気圧防水を備えたチタンケースとラバーストラップを組み合わせている。ドレスとスポーツの両面の特徴を融合させることで、マルチパーパスに活躍できる存在として構成されているのだ。

そのキャラクターは、いわゆるラグジュアリースポーツウォッチに通ずるものだが、そのカテゴリを代表するモデルの多くがクッション型のケースを採用し、光を大きく反射するヘアライン仕上げの平面と、直線に走るエッジの効いたデザインを与えられていることに比べると、旧来の時計らしさを残したラウンド型ケースの本作は、よりクラシカルで落ち着いた印象を有している。誤解を恐れずに言えば“やや地味”なわけだが、過度な主張を抑えたデザインは、ビジネスシーンから簡単なレジャーシーンまで、幅広いシーンでのカバレッジを利かせることにつながっている。レザーストラップに変更すれば、フォーマルシーンも何とかカバーできるだろう。

実用上でストレスとなる欠点が少なく、デザイン面でもスペック面でも汎用性に長けた本作は、まさにブレゲらしい奥ゆかしさを感じさせる、上質なデイリーウォッチなのだ。

ツナ缶の魅力を歴史や設計思想、進化の過程からひもとき、時計選びに役立つ情報を提供する。

セイコーの“ツナ缶”とは? ユニークな愛称の由来
セイコーの“ツナ缶”という愛称は、その独特な外観に由来している。ケース外側を囲むプロテクターが、まるで缶詰のツナ缶を連想させる形状であることから、時計愛好家たちの間で自然とこの名が定着したのだ。

この特徴的なデザインは単なる装飾ではなく、機能性を重視した設計の産物である。外胴プロテクターと呼ばれるこのリングは、ケースを保護し耐久性を高める目的で取り付けられている。

セイコーがこのモデルを初めて市場に送り出したのは1975年。スーパーコピー時計 代引き専門店プロフェッショナルダイバーが求める過酷な環境下での使用に応えるため、外胴プロテクターを含む耐衝撃構造を採用し、優れた信頼性を提供した。結果、このユニークな時計はその愛称だけでなく、時計業界全体からも評価されることとなった。

ツナ缶誕生の歴史と進化の過程
セイコー「プロフェッショナルダイバー600m」6159-7010
1975年に登場した、世界初のチタン製ワンピースケースを搭載した「プロフェッショナルダイバー600m」6159-7010。長時間に渡る飽和潜水に耐え得る安全性、耐久性を実現。このモデルには外装だけでも、特許や実用新案、意匠登録された多数の独自技術が採用されている。
ツナ缶が誕生した背景には、深海探査や飽和潜水といった特殊な環境下での使用に対応する時計を開発したいというセイコーの挑戦があった。1975年に発売された初代モデル「プロフェッショナルダイバー600m」6159-7010は、600m防水性能を備えた当時としては画期的なダイバーズウォッチであった。

その後もセイコーは、時代の進化に合わせてツナ缶の技術や性能を向上させてきた。そして、ツナ缶は単なるダイバーズウォッチに留まらず、セイコーの技術力を象徴する存在となっている。

現在では、一般ユーザーにも使いやすい多様なバリエーションが展開されており、プロフェッショナルユースと日常使いの両方で高い評価を受けている。このように、ツナ缶は時代の変化に柔軟に適応しつつ、常に進化を遂げてきた時計であると言える。

ダイバーズウォッチとしての設計思想
ツナ缶はその名に象徴される外胴プロテクターをはじめ、ダイバーズウォッチとして徹底した設計思想を反映している。特に、防水性能と耐久性の向上において、このモデルは群を抜いている。プロテクターリングは、ケース全体を衝撃から守るだけでなく、深海での高い圧力にも耐えうる頑丈さを提供する。この工夫により、時計内部への水や塵の侵入を防ぎ、過酷な環境下での使用において信頼性を確保している。

さらに、視認性もツナ缶の特徴である。ルミブライトを使用した針やインデックスは、暗所でも一目で時刻を確認できるほどの明るさを誇る。これにより、深海だけでなく、夜間のアウトドア活動や災害時の使用にも適していると言える。また、ケースサイズが大きめであるにもかかわらず、着け心地にも配慮されており、多くのユーザーから高い評価を得ている。

こうした設計思想は、単なる機能の追求に留まらず、使用者の安心感を提供することに重点を置いている。ツナ缶が、ダイバーだけでなく、冒険家や時計愛好家にも支持される理由がここにあるのではないだろうか。

他のダイバーズモデルとのデザインの違い
外胴プロテクター
時計の側面を覆うツナ缶を思わせる特徴的な外胴プロテクターにより、高い耐久性を誇る。
ツナ缶は、セイコーのダイバーズウォッチシリーズの中でも、他のモデルとは一線を画す独特なデザインが特徴だ。特に注目すべきは、ケースを取り囲む外胴プロテクターだ。このパーツは、ケース全体を衝撃から守るだけでなく、視覚的なインパクトも大きい。ダイバーズウォッチの中でも機能性を優先したデザインでありながら、時計としての美しさを損なわない点が人気のひとつである。

一方、一般的なダイバーズウォッチは、丸みを帯びたケース形状に加え、薄さや軽量性が求められることが多い。それに対し、ツナ缶は大きめのケースと厚みのあるプロテクターリングを採用しており、視認性や耐久性を重視している。また、リュウズを4時位置に配置することで、手首の動きに干渉しにくい構造となっている。この設計は、プロフェッショナルダイバーが長時間使用する際の快適さを考慮したものであり、実用性を最優先したデザインと言える。

セイコー ツナ缶
初代ツナ缶から継承されている4時位置のリュウズは、装着時に手首を動かしても甲に当たりにくく、非常に実用性に優れている。
さらに、一般的なダイバーズウォッチがスリムなベゼルを採用することが多いのに対し、ツナ缶はしっかりとした厚みがあり、操作時のグリップ感が向上している。これにより、グローブを着用した状態でも扱いやすくなっており、プロフェッショナルの使用を前提とした設計思想が垣間見える。このように、ツナ缶は他のモデルとは異なる独自性を備えつつも、実用性に根ざしたデザインを追求しているのだ。

セイコー“ツナ缶”のケース構造
外装は気密性と水密性に優れたL字型ガラスパッキン、Oリング(オーリング)からなるリューズパッキンを縦横の四方向から押圧するリューズツインサイドシールド構造、ねじリングガラス固定構造など、密閉度を高め、過酷な環境下に耐えうる防水性・安全性を実現している。
クォーツモデルから現行モデルへの展開
ツナ缶は、初期モデルからクォーツ化を経て、さらに技術革新を重ねて進化してきた。1978年に初めてクォーツ式の飽和潜水仕様の600m防水ダイバーズが誕生し、機械式時計に比べて高精度である点が評価された。このムーブメントは、長期間にわたり安定した性能を発揮するという特長がある。クォーツモデルは定期的なぜんまいの巻き上げが不要で、深海での過酷な条件下でも年差レベルの正確な時刻を保持することから、プロフェッショナルダイバーだけでなく、一般ユーザーにも支持された。

こうしてツナ缶は、プロフェッショナル仕様から日常使いまで対応可能なモデルとして進化してきた。これにより、時計愛好家だけでなく、多様なライフスタイルを持つ人々にも広く受け入れられている。その一方で、初代モデルのデザインや機能を踏襲した復刻版も人気を博しており、歴史的価値を再認識するきっかけとなっている。このように、ツナ缶はセイコーのダイバーズウォッチシリーズの中でも、技術と伝統の融合を体現する存在である。

エイプリルフールのユーモア溢れるツナ缶ネタ
セイコー ツナ缶

2017年のエイプリルフールにセイコーウオッチは、時計にツナを内蔵した“ツナ缶”時計を発表。さまざまな企業がウソネタを披露した中で、Webメディアが記事に取り上げた“ネタNo.1”となり、話題となった。
セイコーのツナ缶は、独特のデザインと実用性で高い評価を受けているだけでなく、その愛称も時計愛好家の間で親しまれる一因となっている。この愛称は、セイコー自身も公式に認めており、ブランドとしてもツナ缶のユニークな側面を積極的にアピールしている点が興味深い。

その一例として挙げられるのが、2017年のエイプリルフール企画だ。この年、セイコーは公式に「究極のダイバーズウオッチ『ツナ缶』」を発表し、時計業界やファンの間で話題となった。この企画では、ユーモラスな商品紹介が行われ、時計そのものが缶詰として販売されるという、架空の設定が披露された。この取り組みは、セイコーが時計製造における真摯な姿勢だけでなく、遊び心やクリエイティビティも持ち合わせていることを象徴した出来事だった。

このエイプリルフールの取り組みを通じて、ツナ缶の親しみやすさがさらに強調される結果となった。こうした活動は、セイコーがブランドとしての信頼性を損なうことなく、愛好家との距離を縮めるきっかけを作る良い事例と言えるだろう。このように、ツナ缶という時計は、性能やデザインだけでなく、その名称に込められたストーリーによっても、多くの人々に愛され続けているのである。

セイコーのおすすめダイバーズモデル
セイコーのツナ缶は、その独特なデザインと高い性能によって愛されているシリーズである。セイコーにはほかにも高性能なダイバーズモデルが多く存在している。

そこでここでは、Ref.SBBN047とRef.SBDX023について詳しく紹介しよう。これらは、それぞれ異なる特徴を持ちながら、セイコーの技術力とデザイン哲学を体現している。

セイコー プロスペックス「マリンマスター プロフェッショナル」Ref.SBBN047
セイコー プロスペックス「マリンマスター プロフェッショナル」SBBN047
セイコー プロスペックス「マリンマスター プロフェッショナル」Ref.SBBN047
クォーツ(Cal.7C46)。7石。Tiケース(直径49.4mm、厚さ16.3mm)。1000m飽和潜水用防水。39万500円(税込み)。
Ref.SBBN047は、1000mの飽和潜水用防水性能を備えたプロフェッショナル仕様のダイバーズウォッチである。このモデルの最大の特長は、外胴プロテクターを採用したユニークなデザインと、その実用性の高さにある。ケース素材にはチタンを使用し、セイコー独自のスーパーブラックダイヤシールドコーティングが施されている。これにより、耐久性が向上すると同時に、軽量化も実現している。

ムーブメントは、高精度で定評のあるCal.7C46を搭載している。このクォーツムーブメントは平均月差±15秒の精度を誇り、約5年の電池寿命を持つ。また、カレンダー機能を備えており、日常使いにおいても非常に便利である。サファイアガラスが採用されているため、傷つきにくく、視認性も良好である。

Cal.7C46
Cal.7C46は、セイコー初のクォーツダイバーズ「1978 クオーツダイバーズ」に搭載したCal.7549から、さらなる進化を遂げたクォーツムーブメントである。優れた耐磁性能を持ち、約5年の電池寿命、平均月差±15秒の高精度、高トルクで夜光の載った太い時分針を駆動する。
デザイン面では、49.4mmという大きなケースサイズが目を引くが、チタン素材の採用により、重量は118.5gと軽量である。ルミブライトを使用した針やインデックスは、暗所での視認性を確保しており、深海での使用にも対応可能である。性能とデザインを両立させたモデルとして、プロフェッショナルダイバーから一般層まで幅広い層に支持されている。

セイコー プロスペックス「マリンマスター プロフェッショナル」Ref.SBDX023
セイコー プロスペックス「マリンマスター プロフェッショナル」SBDX023
セイコー プロスペックス「マリンマスター プロフェッショナル」Ref.SBDX023
自動巻き(Cal.8L35)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径44.3mm、厚さ15.4mm)。300m飽和潜水用防水。35万2000円(税込み)。
Ref.SBDX023は、セイコープロスペックス「マリーンマスター」シリーズのひとつであり、300mの飽和潜水用防水性能を持つダイバーズウォッチである。このモデルは、ステンレススティールケースとセラミック製ベゼルを組み合わせた堅牢な作りが特徴で、傷つきにくく、美しい外観を長く維持する。

ムーブメントは、セイコーの高級機械式ムーブメントであるCal.8L35を搭載している。このムーブメントは、約50時間のパワーリザーブを持ち、高い精度と耐久性を兼ね備えている。ねじ込み式リュウズや逆回転防止ベゼルといったプロフェッショナルダイバーズウォッチとしての基本機能も完備しているので、過酷な環境下でも信頼できる時計である。

デザイン面では、ブラックの文字盤に大きなルミブライトを施したインデックスと針を配置し、暗所での視認性を確保している。ケースサイズは44.3mm、重さは約222gと存在感のある設計ながら、バランスの取れた装着感を実現している。また、ステンレススティール製のブレスレットにはダイバーエクステンダー方式の三つ折れプッシュ式中留が採用されており、実用性が高い。

Ref.SBDX023は、セイコーが培ってきたダイバーズウォッチの伝統と最新技術を融合させたモデルである。その性能やデザインは、プロフェッショナルダイバーのみならず、時計愛好家にも高く評価されている。

ファンに愛されるセイコーの“ツナ缶”を手に入れよう
セイコーのツナ缶は、独特なデザインと高性能を兼ね備え、時計愛好家からプロフェッショナルまで幅広い層に愛されているダイバーズウォッチである。その名の由来ともなった外胴プロテクターを中心に、耐久性、視認性、防水性能など、過酷な環境にも耐えうる機能が凝縮されている。

ツナ缶は、セイコーの革新性と技術力を象徴する存在であり、その一本を手にすることで、日常や特別なシーンでのパートナーとして長く愛用できるだろう。