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ローラン・フェリエの時代の再来か。

先週のGeneva Watch Daysにおいて、ローラン・フェリエはひっそりとクラシックのケース形状を持つ新しい時計を発表した。控えめな見た目を持つその新作はセリエ アトリエコレクションの一環としてわずか20本限定でリリースされたが、私にとってこのフェアのなかで最も印象に残る時計のひとつとなった。

Laurent Ferrier Classic Auto
控えめなデザインであることは悪いことではない。この慎み深さ、そして一貫した品質と細部へのこだわりこそがローラン・フェリエが多くのファンを引きつけた理由である。リッチ・フォードンがその紹介記事で指摘したように人々は1度は同ブランドの時計を求めたものの、ある時期からローラン・フェリエ以外のブランドに目を向けるようになった。控えめであることは、コレクターの大半にとってやや流行遅れとなってしまったのである。リッチのアナロジー(推察)を借りるなら、今年はローラン・フェリエが再びスポットライトを浴びるために必要な年だった。パテックフィリップスーパーコピーN級品クラシック ムーンのリリースと並び、しばらくぶりにこのブランドに興奮を覚えた。 

Laurent Ferrier Classic Auto
正直なところ、クラシック オート サンドストーンがなぜこれほどまでに素晴らしく映るのか、そしてなぜデイト表示のない同じくカッパー色/サーモン色のクラシック マイクロローターと比較してなおこのデザインのほうが優れているように感じるのかは分からない(個人的にはデイト表示のない時計のほうが好みである)。昨年レビューしたスポーツ オートよりも、このクラシックな文字盤にある“エアインテーク”風のデイト窓のほうが好きだ。十字が入ったセクターダイヤルのバランスが、ヴィンテージを感じさせる文字盤の雰囲気とうまく調和している。この文字盤には18Kホワイトゴールド(WG)のインデックスとアセガイ(槍)型の針、プリントで施されたミニッツトラックが見られ、3時位置にはバーインデックスがない代わりにボール型のインデックスが配置されている。

Laurent Ferrier Classic Auto
これはローラン・フェリエのセリエ アトリエの第6弾となる時計である。ローラン・フェリエと聞いてこのケースを思い浮かべる人も多いと思われるが、磨かれた“カレ(小石)”のように丸みを帯びたケースを引き続き採用している。柔らかなエッジ、曲線的なベゼル、そしてラグにおける滑らかなラインが特徴的だ。これがブランドのクラシックなデザインであることは承知しているし、私たちが手にしているのはヴィンテージのパテックではないことは理解している。しかし時折、より強調されたラグやブラッシュ仕上げが組み合わされたデザインだとどのように見えるのかと考えることがある。だが、たとえそのようなデザインがあったとしてもそれはローラン・フェリエの時計ではないだろう。

Laurent Ferrier Classic Auto
ケースはステンレススティール(SS)製で、スポーティかつ軽やかな印象を与える。ケースの幅は40mmと現代的なサイズ感であり、厚さは11.94mmであるが特にずっしりとした重厚さを感じることはなかった。横から見たラグの先端が丸みを帯びているなど、ヴィンテージウォッチのデザインからインスピレーションを得た細かなディテールは、今ではレジェップ・レジェピのミニット・イネルテなどのモデルにも見られるようになった。このように、全体としては非常に快適な装着感を提供している。

Laurent Ferrier Classic Auto
この時計はスイスレバー脱進機とプラチナ(Pt)製のマイクロローターを搭載した自動巻きのCal.LF270.01を搭載している。このムーブメントは控えめでありながら美しい。手仕上げによる139の加工プロセスが施されており、内外角の面取りにサーキュラー・グレイン、コート・ド・ジュネーブ、ローターに施されたシェブロンやフェザーの模様がその美しさを際立たせている。

Laurent Ferrier Classic Auto
個人の好みによる部分もあるが、クラシック マイクロローター “オータム”にはデイト表示がなく、ナチュラル脱進機が搭載されているために新しいクラシック オートよりも約150万円ほど高い。Cal.LF270.01がレバー脱進機を採用したのは、スポーツ オートに搭載するにあたり最も耐衝撃性が高かったためだ。しかしナチュラル脱進機のテンプにダブルダイレクトインパルスを搭載したことは、ローラン・フェリエが時計史に名を残すべき功績のひとつである。ブレゲは摩擦の少ないデテント脱進機の仕組みと、トーマス・マッジ(Thomas Mudge)が1755年に発明したレバー脱進機の自己稼働機能を組み合わせるアイデアを持っていた。ジョージ・ダニエルズ(George Daniels)やデレク・プラット(Derek Pratt)などほかの時計師もそれぞれのソリューションを見つけたが、ブレゲのアイデアを完全に実装したのはフェリエ氏だけである。こうして摩擦が少なく、より高精度な時計が生まれた。

Laurent Ferrier Classic Auto
単一の主ゼンマイ(72時間のパワーリザーブ)と輪列(ジョージ・ダニエルズのスペース トラベラーでは輪列はふたつ見られた)を備え、ブレゲの時計のようにふたつのガンギ車が噛み合い、ひとつ目のガンギ車がふたつ目を駆動する。これは少々専門的な話ではあるが、ローラン・フェリエの歴史においてナチュラル脱進機がいかに重要であるかを示している。また、あなたがその歴史を手首に刻みたいのであれば、あるいはデイト表示が日常使用のうえでより実用的かどうかを考慮したいのであれば、この違いを考慮する価値は十分にある。

Laurent Ferrier Classic Auto
この違いは、私がこの時計について抱くもうひとつの重要な問題点を浮き彫りにしている。まず5万スイスフラン(日本円で約845万円)という価格は、たとえこの品質であってもSS製ケースの時計にしてはやや高いように感じられる。手巻きのクラシック オリジンはスイス製レバー脱進機を搭載しておりデイト窓はなく、かなり魅力的なグレード5チタンケースを持ちながら価格は599万5000円(税込)である。先に述べたようにSS製のクラシック マイクロローターはわずか150万円ほど高いだけで、もう少し時計製造における“技術的な凄み”を得ることができる。フルチタンケースとブレスレットを備えたスポーツ オートは871万2000円(税込)だ。こうした価格を考慮すると、この時計は4万スイスフラン(日本円で約675万円)に近い価格であるべきだと考えていた。

Laurent Ferrier Classic Auto
これは昨今、コレクターからローラン・フェリエに対してよく聞かれる意見である。ブランドが優れた時計を作っていないわけではないが、価格が人々の許容範囲の限界に近いということだ。今回の場合、セリエ アトリエの限定発売によるプレミアムが価格に反映されている。しかしこの時計がもっと手ごろな価格でコレクションの一部として発表されていたらと思わずにはいられない。とはいえ20人の購入者にとってはその価値があるのだろう。この時計が、ローラン・フェリエが再注目される時代の序章を担うものであることを願っている。

Laurent Ferrier Classic Auto
ローラン・フェリエ セリエ アトリエ クラシック オート “サンドストーン” Ref.LCF046.AC.B2G1。直径40mm、厚さ11.94mmのSS製ケース、30m防水。“サンドストーン”風サーモンカラーのラッカー仕上げ文字盤、18KWG製の針とインデックス、時・分表示とスモールセコンド、デイト表示。Cal.LF270.01、2万8800振動/時、パワーリザーブは72時間。ダークブラウンのカーフレザーストラップ、同色のアルカンターラ製ライニング。価格: 5万スイスフラン(日本円で約845万円)。限定20本。

ウニマティックから、より低価格の新しい自動巻きGMTモデルが2本登場した。

ウニマティックのGMTは、ておなじみの存在だ。2021年には、ウニマティック初のGMTであるHODINKEEコラボレーションモデルU1H-GMTが発表され、同ブランドにセリタベースのSW330-2ムーブメントが初めて導入された。それ以来、アーカイブに追加されたGMTは少数ながらもいくつかのモデルが登場している。たとえば、ETAムーブメントを搭載したチタン製のGMTや、カナダのメンズウェアリテーラーであるヘンリー・シンガーとのコラボレーションによるモデロ クワトロ、そしてもちろんフォージドカーボンケースを使用した第2弾HODINKEEエディションなどがある。これらエディションの価格は概ね1500ドル(日本円で約20万円)台以上で推移しており、フォージドカーボンケースモデルでは3000ドル(日本円で約45万円)に達するものもあった。

hodinkee 1st collab
IWCスーパーコピー代金引換を激安お客様に提供しますウニマティックとHODINKEEの初代コラボレーションGMTモデル、U1-HGMT。

non collab GMT
チタン製のウニマティック U1S-TGMT。

今年、ウニマティックは1000ドル(日本円で約15万円)以下の価格帯を強化することに注力している。7月にはクラシックシリーズと並ぶエバーグリーン製品として、4つのクォーツ“ツールウォッチ”シリーズを非限定版として発表した。その流れを受けて、先週ウニマティックは新たにふたつのモデル、モデロ ウノ GMTとモデロ クアトロ GMTをリリースした。これらは初となる日本製GMTムーブメントを搭載することで価格を大幅に引き下げたものだ。

ut4gmt laying flat
case side
rubber strap
デザイン面において、U1-GMTとU4-GMTはそれぞれモデロ ウノおよびモデロ クアトロファミリーのほかのモデルと同様の特徴を備えている。どちらもウニマティックの象徴である幅の広い40mmケース、22mmのラグ幅、両面ドーム型サファイアクリスタル、ドリルドラグ、そして300mの防水性能を備えている。今回、ウニマティックはモデロ サンクで初めて採用されたクイックリリース付きのTPUラバーストラップを改良し、新たに採用した。個人的には以前のウニマティックのラバーストラップもとても気に入っていたが、多くの人がもっと柔らかく、テーパードしたデザインを望んでいた。その希望を反映したのが今回の新バージョンである。もう少しだけ厚みが増せば、重厚感のあるケースとよりマッチするのではないかとも感じたが、それでも元のストラップに比べて明らかに快適さが向上している。

正面から見ると、モデロ ウノとモデロ クアトロ GMTのモノクロデザインが、2021年に見られたトーンを反映していることは明らかだ。ダイヤルはマットブラックで、インデックスにはスーパールミノバが塗布されており、6時位置には日付窓が設けられている。針のデザインはブランドが“ファントムラダー”と呼ぶスタイルで、先端の大部分が白く塗装されている秒針は逆ロリポップ針となっている。

closeup of dial
これまでのいくつかのモデル同様、この2種類の時計で私が最も気に入っているディテールはくり抜かれたGMT針だ。先端にはスーパールミノバがコーティングされており、今ではこのデザインをウニマティックの象徴的な要素と捉えている。大きめのGMT針との相性もとてもいい。とくに誇張された針のデザインが気に入っており、明るく対照的な夜光コーティングが施された部分が際立つ。また中央がくり抜かれていることで、ダイヤルが常に遮られないようになっている点も素晴らしい。

モデロ ウノ GMTには120クリックの逆回転防止ベゼル(24時間表示付き)を搭載。ウニマティックのGMTベゼルも、一般的なGMTのように1時間ごとにクリックする仕様に変わればいいという声が以前から多くあり、私もその意見に賛成だ。そうすることでGMT機能がさらに実用的に感じられるだろう。ベゼルインサートはマットブラックであり、このモデルではベゼルの時刻表示に新しいフォントが採用されていると思われる。以前のGMTベゼルと比べるとこのフォントは少し力強く、やや横に広がった印象があり、全体的にほんの少し未来的なデザインを与えているようだ。

モデロ クアトロ GMTでは、ウニマティックにとって初めて固定ベゼルにマークを施したモデルである。このマークはエングレービングではなく、酸を使ったエッチングによって施されている。酸を用いたこの手法は、金属に物理的な工具を使用するのではなく酸性の溶液を使ってデザインを刻む技法である。U4-GMTのベゼルで見られるように、酸エッチングの主な利点のひとつは、溝に機械加工の跡が残らず、よりシャープでクリーンな仕上がりになる点だ。

ふたつの時計を裏返すと、裏蓋にはモデル名、各300本限定のシリアルナンバー、そして外出先でもベゼルの使い方を確認できるタイムゾーンスケールが刻まれている。

もちろん、今回注目すべき点は日本製のGMTムーブメントを搭載したことだ。これによってウニマティックはこのふたつのモデルの価格を大幅に引き下げることができた。ケース内部に搭載されているのはセイコーの自動巻きムーブメントNH34Aで、振動数は2万1600振動/時、そしてブランドのほかのGMTモデル同様に“コーラー”GMT機能を備えている。“コーラー”GMTとはローカルタイム用の時針を単独で調整できるのではなく、リューズを引き出したあとにGMT針を単独で調整できる機能を指す。ムーブメントの精度は日差-20秒から+40秒と、きわめてセイコーNHらしいスペックだが、この価格帯では十分許容範囲だろう。個人的にはセイコーNHのムーブメントを搭載した時計は体感いい結果が出ているが、精度は個体差があるだろう。

装着感はまさにウニマティックらしいものだ。ウニマティックのように厳格なデザインシステムを持つブランドの予期せぬ利点のひとつは、ひとつのモデロ クアトロを装着すればほかの同モデルもほぼ同じ装着感だと分かるため、純粋にデザインに集中できることだ。結局のところ、これらは大振りな時計なのである。私は多くのモデロ ウノとモデロ クアトロを所有していて、少し大き目の時計として楽しんでいる。しかし日本製ムーブメントを搭載したウニマティック全般に言えることだが、その厚さは確かに目立つ。スペック上では、モデロ ウノはモデロ クアトロよりも薄く、U1が12.9mmで、U4が13.7mmだ。しかし私の細い手首ではU4の固定ベゼルデザインのほうが装着感が高く、視覚的にもコンパクトに感じられる。

U4 Wristshot
もしどちらかを選べと言われたら、私の心はモデロ クアトロ GMTに傾くだろう。固定されたサテン仕上げのベゼルが新鮮さを感じさせ、スティールケースとの調和はこれまでに見たことのない魅力を引き出している。モデロ ウノが675ユーロ(日本円で約11万円)、モデロ クアトロが600ユーロ(日本円で約9万5000円)という価格設定は、同じくセイコーNHムーブメントを搭載するウニマティックの“クラシック”シリーズのすぐ上に位置している。これらふたつの時計はこの価格帯において、より興味深い機能を顧客に提供するモデルなのだ。

コラムでは、これらの情報に加えて、さらに多くの内容を紹介している。

今週もやってきた。Bring A Loupeへようこそ! 時計市場は決して止まることがないし、私もそうだ。高額な市場では大手オークションハウスが、11月に向けたジュネーブカタログをまもなく発表する予定だ。貯金を始めるか、そうでなければこのまま読み進めて、ヴィンテージとそうでない時計のなかから今手に入る最高のものをチェックして欲しい。

先週を振り返ろう。まずオリジナルオーナーの出自を持つトロピカルダイヤルのチューダーが、新しい持ち主のもとへ渡ったことをうれしく思う。オークションの結果については、イナイヘンでロンジンのルーレットポケットウォッチが4200スイスフラン(日本円で約71万円)で落札され、状態のよい1950年代のロレックス OPは2100ドル(日本円で約30万円)で落札された。一方、eBayに出品されていたヴィンテージカレラは“出品内容に誤りがあった”として謎の削除。eBayを介さずに取引があった可能性を感じる!

忙しさで見逃してしまった? 最信頼性の日本パネライスーパーコピー代引き専門店ご心配なく。今週のピックアップはさらに素晴らしい内容だ。それでは始めよう。

ユニバーサル・ジュネーブ トリコンパックス Ref.22297/3、1950年代製
a Universal Geneve
求めよ、さらば与えられん。つい先週、ヴィンテージ市場に高品質なユニバーサル・ジュネーブが不足していると嘆いたばかりだが、どうやらeBayが応えてくれたようだ。HODINKEEの輝かしいページに掲載された、恐らく最悪の写真セットに隠れているのは、まるで未使用品のようなRef.22297/3 トリコンパックスだ。これまでにも言ってきたが、eBayをスクロールするとき、まさにこういう写真を探している。これらは“手付かずの時計や珍しいプロトタイプ、過渡期の針だとかで値段を釣り上げるような極端なマニアではない売り手である”ことを示している。そしてここで言う“マニア”は、最も優しい意味で使っている。多くの人が私をそう形容するだろうから。

過渡期といえば、トリコンパックスの歴史ではRef.22297がまさにその位置付けだ。トリコンパックスを思い浮かべるとき、私は通常ピート・フラートン(Pete Fullerton)のような初期のRef.22279か、後期の防水性能を備えたツイストラグケースと“リネン”ダイヤルを持つRef.222100/1を想像する。今お分かりのように、今回のリファレンスはこのふたつより一般的な世代の中間に位置している。Ref.22297は防水ケースを備えているがラグはシンプルで、先端が下に向いた伝統的なシェイプが特徴的だ。またこのリファレンスはイタリアのコレクターたちから“スピッリーノ”プッシャーと呼ばれる、小振りのプッシャーで知られている。

a UG Tri-Compax
写真を見る限りでは、このユニバーサルにはイタリア人コレクターやほかのコレクターたちが手を加えた形跡はなく、自然な経年変化を保っている。ケースはとてもしっかりしており、夜光部分もきれいでいい感じのパティーナが見られる。リファレンスナンバーに付けられた“/3”は、このダイヤルタイプに対応するダイヤルコードと考えられ、すべてが整合している。オークション開始時のバイヤーの価格も妥当だ。信頼できるディーラーから購入する場合、このリファレンスはもう少し高い価格で取引されることが多い。しかし写真を見る限り、この時計のコンディションはそれ以上にいい可能性がある。

a UG Tri-Compax
カリフォルニア在住のeBay出品者でありアマチュア写真家がこのトリコンパックスをオークションに出している。終了は9月8日(日)の米国東部時間午後4時14分だ(US版掲載時)。この記事の公開時点では、開始価格8998ドル(日本円で約130万円)に対してまだ入札がない。

パルミジャーニ・フルリエ クロノグラフ ローズゴールド Ref.PF006782、2002年製

パルミジャーニ・フルリエの初期の数年間は、私の心に深く刻まれている。これらはまさに21世紀の幕開けにつくられた最高の時計のひとつだ。ここで詳しく話すよりも、昨年3月の記事をぜひチェックして欲しい。もしこのパルミジャーニに見覚えがあるなら君は正しい。というのもチャールズ3世国王が所有し、頻繁に着用していたことで有名だからだ。このチャールズ3世のつながりによって、同ブランドの初期クロノグラフは時計界で一種のカルト的な人気を誇っている。

フィリップスのオンラインセールで、まさに完璧な1本を見つけた。この時計を手に入れれば、英国国王のようになりたいと思ったことがある人にとってはいい1歩になるだろう。もちろん時計を手に入れたあとは乗馬を始めたり、バブアーのジャケットを着たりするのもいいかもしれない。

真面目な話をすると、この世代のパルミジャーニの時計がなぜこれほど素晴らしいのかを言葉で説明するのは本当に難しい。リンク先の記事では“過剰につくり込まれている”と表現したが、それがなかなか適切な説明だと思う。実際に手に取ってみればすぐに理解できるだろう。つくりの精巧さや仕上げのレベルが非常に高く、とくにこの価格帯でそれを実感できるのは驚異的である。

このパルミジャーニ・フルリエは、フィリップスのウォッチオンラインオークション“The Geneva Sessions, Fall 2024”に出品されるロット13だ。見積もり額は6000スイスフランから1万2000スイスフラン(日本円で約101万~200万円)だが、これは“甘い”見積もりだと思う。実際には上限を超える価格で落札されるだろうと予測する。

ハミルトン クロノマチック フォンテーヌブロー プロトタイプ、1969年製

自動車コレクションの世界では、プロトタイプやオートショーで発表されるコンセプトカーが特別な存在だ。これは確かにクルマ界全体のなかではニッチな分野だが、プロトタイプの独特な魅力こそコレクションの最高潮と捉える人もいる。ニューヨークのモートン・ストリート・パートナー(Morton Street Partners)からこのニッチな分野を追いかけて学んだ私にとって、非常に新鮮な体験だった。60年代のフェラーリや空冷ポルシェではなく、1959年のシトロエン スクワールや1984年のロータス エトナのようなクルマを取り上げているモートン・ストリートは奥深い世界なのだ。時計業界にはモートン・ストリートのような存在はないが、もしあれば、このハミルトンの1969年製プロトタイプ、いわば時計界のシトロエン スクワールのような一品の特異性をキュレーションし、際立たせていたことだろう。

これはコンセプトウォッチに限りなく近い存在だ。1969年のバーゼルで発表されたハミルトン クロノマチック フォンテーヌブロー(そう、この時計そのものだ)は、クロノマチック、またはプロジェクト99コンソーシアムによる成果のひとつである。これは4ブランドが4年間かけて世界初の自動巻きクロノグラフムーブメントを目指した開発競争の一環だった。長い物語になるが、これは時計史において間違いなく重要な瞬間であり、この時計はそのなかでも特別な役割を果たしていた。ハミルトンがバーゼルで発表した5つのクロノマチックのうちの1本なのである。

ドイツのシュック ザ オイスター(Shuck The Oyster)のアーサーが、この5本しか存在しないハミルトンのプロトタイプの1本を1万900ユーロ(日本円で約170万円)で提供している。詳細はこちらから。

カルティエ用のモバード エルメト、1930年代製

後半に控えている同僚のタンタン・ワンからの特別なモデル(ちょっとした予告!)の前に、この個体をお届けしよう。この小さなモバード エルメトが今週、私のオークション検索に引っかかり、私はすぐに昨年見た最高のもののひとつで、フィリップスがオークションにかけたカルティエの時計を思い浮かべた。マライカ・クロフォードがこの記事でそのセールを取り上げており、私もジュネーブとニューヨークのプレビューでその時計を見る機会があったが、いずれも本当に驚くべきものだった。それはさておき、このエルメトはより小型ながらも同じ時代のもので、ケースに施されたエナメル加工や漆塗りが似たような雰囲気を感じさせる。カルティエで販売されたエルメトを見つけること自体は可能だが、このようにケース仕上げが完全な状態で残っているものを見つけるのはまったく別の話だ。エナメルや漆の層はとても薄く、この仕上げが剥がれてしまっているエルメトを何本も目にしてきた。

エルメト自体が驚くべき時計だ。ケースを開閉することで独自に巻き上げる仕組みを持ち、モバードはこれを数十年にわたり多く販売してきた。もしかしたら、これだけでひとつの記事になるかもしれない。お楽しみに。

このカルティエ用モバード エルメトは、ノースヨークシャーのレイバーンにあるテナンツオークショニアズ(Tennants Auctioneers)で販売されている。2024年9月14日(土)午前9時30分(英国標準時)から始まるJewellery, Watches & Silverセールにおけるロット2461だ。見積もり額は300ポンドから400ポンド(日本円で約6万~7万円)となっている。

ミドー マルチフォート エクストラ スーパー オートマチック、1950年代製

もし35mm未満のシンプルなラウンド型タイムオンリーウォッチを気にせずつけられるなら、ヴィンテージミドーをチェックして欲しい。このモデルがその完璧な個体だ。ケースはフランソワ・ボーゲル(François Borgel)によるもので、サイズは34mm(FB製のパテック Ref.565よりたった1mm小さいだけ)だ。ダイヤルデザインはエレガントでありながらシンプルで、最終入札価格はおそらく200ドル(日本円で約3万円)程度だろう。ミドーであることは理解しているが、この時代のパテックのカラトラバがどんどん高額になる一方で、こうした時計が数百ドルで手に入るという事実は残念でならない!

ひとつ補足しておくと、FB製ケースを使用したミドーの多くはこれよりも小さいサイズだ。ほかのモデルを探す際はケースサイズを確認し、このマルチフォート エクストラ スーパー オートマチックを探してみて欲しい。これは、ミドー流に言うと“ほかのモデルより少し大き目”という意味だ。

eBayユーザーがこのミドー マルチフォートを、開始価格95ドル(日本円で約1万3000円)で出品している。オークションの終了は2024年9月10日(火)の午後9時(東部標準時)。記事公開時点では、まだ入札がない!

注目の1本! グランドセイコー 9F スポーツコレクション SBGV243

もしグランドセイコーの9Fムーブメントを搭載したクォーツウォッチコレクションというニッチな分野に興味があるなら、“グレイビースト”の愛称で知られるSBGV245がこのカテゴリの王者であることをご存じだろう。オールグレーで統一されたカラーリングはモノクロームデザインの素晴らしい実例であり、今では廃盤となったこのケースこそ私にとってのグランドセイコーの最高傑作のひとつである。サテン仕上げとザラツ研磨仕上げが交互に施されたファセットこそ、田中太郎による“デザインの文法”を現代のグランドセイコーラインナップで最も効果的に表現していると感じる。

同時に発売されたSBGV243のブラックとイエローのカラーリングは、しばしば見過ごされがちだ。“グレイビースト”ほどスマートではないが、ブラックダイヤルに鮮やかなイエローのアクセントがとても魅力的である。私はずっと同モデルの検索アラートをオンにしており、SBGV245と一緒にコレクションに加えたいと思っていた。そしてこの日本からの出品が、今まで見たなかで間違いなく最も低い価格設定であった。写真や出品者の説明によると、ケースはおおむね素晴らしいコンディションで、ファセットもシャープに保たれているようだ。

“注意点”を挙げるとすれば、この出品は時計本体のみで、ボックスや保証書、グランドセイコー純正のデプロイアントバックル付きストラップが付属していないことだろうか。だが私にとっては、それでも十分価値のある取引だ。この時計はすぐに手持ちのストラップに付け替えて、ガンガン使いたいと思っている。詳細はこちらから。