MARIAGE VOICE

お客様1

雪は音をのみこむ
肌と空気との距離を近付ける
その指輪と出会ったのは、去年の6月
偶然立ち読みした雑誌
数ある雑誌の山から、数ある宝石の中から
何気なくふたりで指差した
次のページをめくる。またいつもの会話
また繰り返し、毎日を繰り返す
しかし彼は、いつもの会話に埋もれたページに
そっとブックマークを

7月 指輪との再会は突然に
まさにあの指輪
彼の心に乗ってやって来た
彼女のもとへ
いつもと同じ部屋
いつもと違う空気
いつもと違う色
指輪の輝きに空気は揺れる
視界はユガム

その夜から、彼女は地面から4mm浮いて歩く
空中浮遊な日々
「でも、結婚はもすこし先ね」と、ふたり。

転機は突然やってくる
また、重ねてやってくる
雪だるまみたいに

仕事と自分、生活と自分、人と自分の距離
8月、彼女は4月からクツ作りの学校へ行く事を決意
彼は、彼女と一緒に上京を決意
ふたりは、結婚を決意

2月、彼女(緊張)初、彼3度目GEODESIQUE
淡いひかりの中、白い建物の中へ誘われる
ひかりはさらに淡く、色彩は濃く、輪郭は鮮明に
指輪の両親はキラキラしていて
指輪もそれに答えるようにまた輝く
彼女が偶然選んだマリッジリングは、音叉リング
彼は、彼女に言っていた
「子どもの名前は“おんさ”」

4月、二人は結婚して東京へ
耳をふさいでも聞こえる音
目をとじると見える音
GEODESIQUEと出会ったのは必然
指輪と出会ったのは必然
彼と出会ったのは必然

ゆきだるまはだんだん大きくなる


Yoshitetsu ∞ Shiori

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