虹 の 橋
パフのところへ行くとき星の王子様にお土産はなにがいいと聞くと王子様は
― 何もいらないよ ただ行けばいいんだよ 楽しそうにしてればいいよ
と言いました
で 僕はパフの洞窟の前で
― 来たよ 遊ぼう 出でおいでよ
とステップしながら大声で言いました
しばらくすると小さな声がしました
― だれ?
― ゲクラン
― 知らない
とまた小さな声がしました
― ほら星の王子様から聞いてない? ゲクラン
― ああ聞いた 知ってる 今すぐいく
と返事が来ました
奥からずっずっずっと音がしてギザギザの先の割れた尻尾が出てきて 大きなウロコの背中が出てきました
― なにして遊ぶ?
― ねぇ 月夜の紅鯨のジャンプを見に行こうよ 
― いいよ 背中に乗って
と言うとパフは前を向いて背を低くしました
そして羽を広げてふぁっと宙に浮くと力強くひと羽ばたきして 羽の先端を後ろへ少し縮めると空をすべるように飛んでいきます
― もうすぐ始まる
と言うと頭を低くして高度を下げました
大きな紅鯨が何頭も連なって2重の円を描いて泳いでいました
内側と外側は逆に回っています
それからすれ違いざまに1拍置いて順に交差しながら高くジャンプしていきます
ジャンプを終え着水すると凄い水しぶきが上がります
着水と同時にまた次のジャンプが始まるので 満月に青くて差し出された王冠に紅鯨がシェイプされたルビーに見えます
― うぉ〜っ と僕たちは叫びました
パフはふっと水面すれすれまで急降下して静かにフォバリングを繰り返しました
白い月の中に紅鯨がゆっくり弧を描きます
― 怖くない とパフがいいました
― す・凄いよ きれいだね
とぼくは叫びました
― よかった とパフは小さく言いました
僕たちは紅鯨が疲れてひっくり返って寝てしまうまで眺めていました
それから浜辺へ帰って焚き火を炊いて濡れた体を乾かしました
― 楽しかったね と言うと
― 久しぶりの凄いジャンプだったよ よかったね とパフが言いました

― ねぇ ひっくり返って泡吹いてたよ だいじょうぶかなぁ〜
― ちがうよ あれはよだれだよ お腹一杯で寝ちゃったんだよ
― 紅鯨って凄いんだね なんか好きだなぁ〜 お月様食べちゃうもんね
― あはあはははっ
とひっくり返ってお腹を出してよだれまみれの波間にぷかぷか浮いている紅鯨の姿を思い出して おかしくなって僕は笑いました
― 満月の月の光だよ
― おんなじことじゃん
― まぁ そうだね 食べたって食べきれるもんじゃないし 
― な〜んか いいなぁ〜 しばらくは脳みそぐちゃぐちゃだよね
― あはあはははっ と僕たちは笑いました
その日から僕たちは王子様が言うとおり仲良くなって毎日遊びました
そして日が暮れるとパフは一緒にみんなの所へ行かないと誘っても いつもひとりでとぼとぼ洞窟に入っていきます
王子様はバウバウの水遣りに自分の星へ シェンロンは霧雨林省の世界樹に巻き付きに帰ります
ぼくはみんなのところへ帰ってまた遊びまわります
ときどき神様のお使いで出かけることもあります
お使いの帰りに木陰で休んでいると小さな女の子がいて なでてもらったお礼にパフから話してもらった 中国の海で海賊と戦った冒険の話を話してあげていると 木陰を若い男の人が通りがかりました
若い男の人は ― そのドラゴンは何という名ですか と聞きました
― パフです というと
― そうですか パフですか で元気でいますか と聞きました
― 元気です 毎日遊びに行ってますよ いうと
― うん うん そうですか とうなずいて空を見上げました
― ひょっとするとあなたはリトル・ジャッキー・ペーパーじゃないですか というと
若い男の人は深くうなずきました
― パフはあなたを待っていますよ というと
― 昔戦争があってね・・・・といいました
それからいろんな所を旅しているとパフと会えるかもしれないと思ってたと話してくれました
― いる世界が違ったから でもパフはここへはこれます ぼくは叫びました
― そうですか パフはまだあそこにいるのですか 
― ずーっと閉じ困ったままだったそうです
― それは悪いことをしてしまった しかしあの時力尽きてしまってね
とリトルジャッキーはすまなさそうに言いました
― もしよかったら ここで待っていると伝えてくれないだろうか

パフとリトルジャッキーは並んで虹の橋を進んでいきます
ぼくたちは橋の袂まで送ります
パフとリトルジャッキーもぼくたちみんなが嬉しそうです
ふたりは光になって虹の橋を渡ります
光は思いでぼくたちみんなを照らし輝かせました

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